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准汰の心の病の治療は必ずしも順調とは言えなかった。投薬とカウンセリングにより回復の兆候を見せたかと思えば、突然夕立が降ってきたかのようにして症状の悪化を見せる。
広嶋から処方される薬の量は徐々に増えていき、それに伴い薬の副作用が新たに准汰を苦しめる。
この一進一退の状況に准汰は苛立ちを募らせ、紀美子は一喜一憂をするのだった。
紀美子の反応はやがて准汰の重荷となっていた。
回復から悪化へと思わしくない状況を目の当たりにし、紀美子は大きく落胆をしたのだ。
「余り薬に頼っちゃいけないよ。体調の良い時は薬を飲むのやめたらどうだい」
通院が長引き、投薬が増える准汰に対し紀美子は言う。
准汰自身も迷っていた。病状からなのか、それとも副作用の影響からなのか、手先が震えたり、身体をじっとさせていることができなかったり――長く続いた便秘の末、三時間トイレに篭っても何も出ず。
そわそわと落ち着かない日が続いたかと思えば、余りの怠さに蒲団から起き上がることのできない日が続くこともあった――。
薬を飲んでから余計悪くなったのでは、と広嶋の治療方針に准汰は不信感さえ持ち始めた。
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