受診

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広嶋はとにかく薬を飲み続けるよう准汰に言った。回復をしてきても自分の判断で薬を飲むのを止めないようにと。 何より治療には根気が必要だったのだ。 しかし、准汰にも紀美子にもそれぞれ焦りがあった。 紀美子には息子を早く立ち直らせ早く仕事に就かせたいという思いが。 准汰も早く社会復帰をして紀美子の負担をなるべくなくしたいと思っていた。 また同世代の人間が学業や仕事に打ち込んでいると思うと、じっと等していられなかった。 准汰の紀美子に対する負い目も大きい。食事等の生活費は勿論のこと、治療費や保険料、年金等全て紀美子が負担をしているからだ。 (最近おふくろ疲れてきてるな。早く病気を治して働かないと何もかもが駄目になっちまうかもしれない……。そもそも俺は生まれてきて良かったのか? やっぱりおふくろは俺を産んで後悔してるんじゃ……) 心の病が准汰の思考をネガティブに染める。 (俺なんて居なくなればおふくろも楽になって解放されるだろうに…………死にたい) 准汰の自殺願望はそう簡単には消えなかった。
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