閉ざされた病棟

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病棟内の案内が終わると准汰達は病室に戻って来た。そして矢代から食事の時間や就寝時間、また病棟内の規則を一通り教わる。 「やっぱりアタシはこんな所嫌だね。気持ちが悪いよ」 矢代が病室を出た後で紀美子はぼやいた。紀美子のその顔は嫌悪に満ちている。明らかに紀美子は、この病棟に入院している患者達を差別的な目で見ていた。 「そんなこと言うなよ。俺だって大して変わらないんだ。それに家に引きこもってるよりはきっとマシさ」 准汰は鞄からCDウォークマンを取り出すとイヤホンを耳にする。 「悪いけどおふくろ、もう帰ってくれないか? 一人になりたいんだ」 「分かったよ、帰るよ。少しお小遣置いていくけど、何か足りない物があったら言うんだよ」 紀美子が病室から出て行くと准汰はCDウォークマンのプレイボタンを押した。 ガンズ・アンド・ローゼズのウェルカム・トゥ・ザ・ジャングルのイントロが華々しく始まり、准汰の精神科入院生活の幕が上がった。
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