閉ざされた病棟

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「夕食の準備が出来ましたので、皆さん食堂に降りて来て下さい」 夕方になり、病室内に設置されているスピーカーから食事の知らせが入った。 准汰が昼間矢代から言われた通りにマグカップを持って廊下に出ると、同じように他の患者達も続々と出て来ていた。皆、開け放たれた扉から階段を降り、一階の食堂へと向かう。 准汰が食堂に入ると既に多くの患者達が席に着いていた。准汰がどこに座っていいのか分からずきょろきょろとしていると、昼間ナーススーテションで紹介された向井(むかい)という看護婦が声を掛けてきた。 「ああ、高杉さんの席どうしましょう。どこか空いてないかな?」 向井もきょろきょろと辺りを窺い空いてる席を探す。 「ここ空いてますよ」 近くで様子を見ていた患者の一人が手を振り向井と准汰に言った。 「じゃあ高杉さん、あそこに座って貰える」 准汰が席に着くと正面に座る男が話し掛けてきた。 「お兄さん、新しい人ですよね。やっぱりうつ病とかですか?」 「まぁ、そんなんです」 准汰は作り笑いを浮かべながら、当たり障りのないように答えた。 「担当の先生は岸納先生ですか?それとも赤石(あかいし)先生ですか?」 「岸納先生ですよ」 「ああ、あの先生は気をつけた方がいいですよ。言いなりになると薬漬けにされますから」 男は不気味な笑みを浮かべて准汰に言った。
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