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「……杉さん、おはようございます。もう起床時間を過ぎましたがどうですか?」
准汰の耳に女の声が響いてくる。その声は新庄でも、向井でも、矢代でもない若い女の声だった。
まだ意識がはっきりとしない中、准汰がうっすらと目を開けると、栗色の髪をした見知らぬ看護婦が様子を窺っていた。
「目が覚めました? おはようございます」
「……ほはようほざいます」
准汰は普通に挨拶をしたつもりだったのだが、呂律が回らず上手く挨拶をすることができなかった。
「もう朝食が始まってますけど起きれますか?」
准汰は若い看護婦に言われて身体を起こそうとしたのだが、身体に力が入らず起き上がることが困難だった。
「やっぱり、まだ夕べの薬が効いてますね。無理しなくていいですよ」
看護婦は言った。
(うん。まぁ、まだ可能性の話だから。それでここでの治療だけど、最初の三日間は強い薬で様子を見させてもらうよ。かなり強い薬だから多分ベッドから起き上がることもできない筈。まぁ、その三日間は寝たままで構わないよ)
准汰の脳裏に岸納の言葉が甦る。
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