白衣のアイドル

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岸納から強い薬だとは聞いていたが、それは准汰の想像を絶する物だった。 「起きるの無理みたいだから、食事ここに持って来ますね」 看護婦はそう言うと食事を取りに食堂へと向かう。 (参ったな。こんなに酷いとは思わなかった。こんなのが三日も続くなんて本当に大丈夫なんだろうか……?) 時間が経つにつれ、准汰は昨日までとは違う自分の身体の異常に戸惑う。 頭の中はくらくらとし、身体全身に亙る倦怠感。身体には全く力が入らず、いつまで経ってもベッドから起き上がることができなかった。 (ああ、あの先生は気をつけた方がいいですよ。言いなりになると薬漬けにされますから) 食堂で不気味な笑みを見せたあの男。今更ながら男の言葉が引っ掛かる。あの男の言葉が意味するものは果たして――ただの妄想なのか? 岸納の治療方針により身体の自由を奪われた准汰は、ベッドの上で三日間を過ごしたのだった。
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