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「ねぇねぇ、いつか絶対に結婚しようね。私、ジュンちゃんのお嫁さんに絶対なるから」
最近マンネリ気味してきたセックスの後で、羽香南(わかな)は決まってこの台詞を言う。
准汰(じゅんた)にはそれが、結婚したいしたい、と魔法を唱えているようにも思えたが、不思議と結婚を急かされている気もしなかったし、嫌な気もしなかった。
だが、女を抱いた後で軽々しく結婚を口にしたくはなかったので、いつも素っ気なく羽香南を突き放していた。
「結婚、結婚って、まだ先のことなんて分かんないよ。ベッドの上で簡単に約束するもんでもないしさ。それに俺、精子出ないし。てか、ガキ嫌いだし。結婚したら次は子供が欲しいって言うだろ? そういうの面倒臭くて……」
冷たく言った後で、准汰は羽香南に背を向け、静かに目を閉じた。
それに対して羽香南は感情的に言い返すこともなく、おやすみ、とだけ言う。
急に准汰の中に不安が押し寄せ、痛みを伴い始める。
いっそ振り返って、羽香南を抱き寄せ
『今の嘘だよ。いつかその時がきたら、ちゃんと結婚しよう』
そう言ってやりたいのだが、途端に過去の過ちが脳裏をよぎり躊躇させる。
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