第一章 危険な翔四季

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「ジュン、安心しろって。今までだって問題なくやってこれたろ? 喧嘩も恐喝もナンパも今年で終わりだ。なぁ、最後に弾けちまおうぜ?」 「最後ね……。でもナンパは勘弁しろよ。沙夜(さよ)にバレたら終わりだしよ。てか、俺アイツ一筋だからよ」 「ジュンはそういう所だけ変に真面目だよな。こないだの涼子(りょうこ)ちゃんとだってやれたのにさ。つーか涼子ちゃん、ジュンからの電話待ってんぞ」 「だから勘弁しろって」 准汰は窓を開けると煙草の煙を外に吐き出した。 「なぁ、翔四季。お前、最近やたらと金が必要みたいだけど何か借金とかあんのか?」 「……別に。金が好きなだけさ。俺を満たしてくれるのは金と女と喧嘩くらいだし。……あとはジュンみたいな親友な」 「そりゃ喧嘩以外、誰だってそうだろ。他に何があるって言うんだよ」 准汰は短くなった煙草を窓から放り投げると窓を閉めた。 翔四季は車内に流れるヴァネッサを口ずさむ。 この時、准汰も翔四季も先に待ち受ける自分達の未来なんて知らずに――自分達の運命なんて知らずにいた。 変わらない明日。 変わらない友情。 怖いモノなんて何もなかった。 世界は自分達を中心にして回っているのだと、そう思っていた。
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