カジノバーの悪魔

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准汰に、カジノバーで一緒に働いてみないか、と誘ったのは翔四季だった。 その日、准汰は付き合い始めたばかりの恋人、沙夜とデートを楽しんでいたのだが、偶然にも翔四季と再会を果たした。 沙夜の交友関係に翔四季のようなタイプが居ない所為か、翔四季を初めて見た沙夜は、随分と不安そうな表情を准汰に見せていた。 「月に二十五万は稼げると思うんだ。おいしいと思わね?」 それは分かりやすい勧誘だった。高校も出ていない准汰には、実に魅力的な数字だった。 もともと、華やいだ夜の世界で働いてみたい、という憧れもあったので、准汰はじっくり検討することもなく、その場で二つ返事をした。 隣で伺っていた沙夜は、自分に何の相談もなしに決めてしまったことに不機嫌な様子だったが、ここで稼いだら何か買ってやる、と言って、准汰は簡単に沙夜をあしらってしまった。 翌日、准汰は馴れ親しんだ配送センターでのアルバイトを辞めていた。 それは社会人として身勝手な行動ではあるが、あれこれと考えるよりも行動に移す、一度決めたことはぶれることなく即実行する、それが准汰という男だった。
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