カジノバーの悪魔

3/22
前へ
/174ページ
次へ
カジノバーは、歓楽街から少し外れた雑居ビルの二階にあった。 准汰はカジノと聞いて、もっと巨大で派手な施設を想像していたのだが、そこは窮屈で些か胡散臭い店だった。 店内では幾つか並んだテーブルの上で主にバカラが行われていて、ディーラーと酒で気の大きくなった客とが、夜毎熱い賭けを繰り広げていた。 無論、この国の法律で賭博は禁じられているので、表向きはチップを使ってやり取りが行われていたが、チップは換金可能な物であった。 従業員達が口を酸っぱくして言われていたことは、誰に何を聞かれても、自分はアルバイトなので店のことは何も知りません、と言うことだった。 准汰の新しい職場は、いつ警察が踏み込んでくるか分からない、そんな刺激的な所だったのだ。 カジノと言っても、ここで人生が劇的に変わる様なシチュエーションはそうそう見られなかった。 カジノ、イコール、一攫千金とは遠い国の話なのかもしれない。 それとも、この店がその程度のレベルなのか。 准汰にはこのカジノバーが、その辺の繁華街にあるゲームセンターとさほど変わらない気がした。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加