カジノバーの悪魔

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「……はようございまーす」 出勤した准汰と翔四季は、誰にすると言う訳でもなく、トーンの低い声で挨拶をした。 「おう、早く着替えやがれ、このジャンキー共」 バーカウンター越し、相変わらず口の悪いのは賢斗(けんと)だった。 「おはよう」 その賢斗とは対照的に、穏やかな挨拶を返してきたのが佳紀(よしのり)。 二人共、准汰達の同級生だ。 翔四季は更衣室に入る前にいつものお約束のように賢斗に言った。 「誰がジャンキーだ、クソチョンマゲ」 「うるせーよ、馬鹿ピアス」 売り言葉に買い言葉、翔四季と賢斗のこんなやり取りは日常茶飯事だった。 賢斗は口こそ悪いが、顔は女性のように美しく、美少年と言ってもよかった。 その所為か、たまに賢斗を女性と勘違いして声を掛けてきた馬鹿な輩が、賢斗にボコボコにされることがある。 佳紀は中学生の頃にスラムダンクという漫画が流行ったのを機に、バスケットボールを始めたスポーツマン。 大学に入った今も続けていて、准汰達四人の中では、唯一健全と言える少年だった。 佳紀は身長が高く、甘いマスクをしているので、女性からよくモテた。 賢斗にしても、佳紀にしても、翔四季の周りには美しい男達が集まっていた。 これは決して翔四季が同性愛者という訳ではなく、単純に翔四季が美しい男性を好む性分だからであった。 それは翔四季の美学と言っても過言ではない。
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