カジノバーの悪魔

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店の制服に着替えた翔四季はトイレに、准汰は沙夜に電話を掛けていた。 「もしもし……ごめんな。最近、仕事が忙しくて、なかなか時間が取れないんだ」 「うーん。ジュン君、会いたい。ねぇ、今どこに居るの?」 電話越し、数日ぶりに聞いた沙夜の声は、風邪の所為なのか随分と怠そうだった。 「店に決まってんだろ、これから仕事すんの。今は寝る時間もろくにないからよ、こんなんだけど。でも、もう少ししたら時間できると思うから、だから後少しだけ我慢してくれよ」 沙夜はそれ以上の我儘を言う気力もなかったのか、意外にも素直に聞き入れてくれた。 沙夜は若干、電話を切るのが名残惜しそうではあったが、准汰は躊躇うことなく先に切った。 「何なに? 沙夜ちゃん?」 横で聞いていたのか、賢斗は自慢の長髪を後ろに束ねながら准汰に聞いた。相変わらずどんな仕草も様になる男だと、准汰は思った。 「あぁ。でも風邪ひいてるみたいで、ちょっと元気なかったな」 「そっか。今は俺達もギリギリだからな。でも、ちゃんとフォローはしとけよ」 賢斗はそう言うとバーカウンターから出て、トイレの前で立ち止まった。
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