カジノバーの悪魔

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「おいっ、いい加減に出てこい、このクソピアス。ケツに何ぶち込んでやがんだっ!? んあ? 分かったぞ。シャブだろ?」 賢斗は振り返ると満面の笑みを准汰に見せ、トイレのドアを指差した。 汚い言葉を吐く彼と、美しい顔をした彼は、まるで別人のようだった。 「賢斗、シャブって……」 賢斗の冗談に准汰は苦笑した。 直後、翔四季は何食わぬ顔でトイレから出てきた。 佳紀が温い御絞りを手渡すと、翔四季は、サンキュ、と言って簡単に手を拭き、それを賢斗に向かって思いっきり投げ付けた。 賢斗は、来た来た、と言わんばかりに大きく下にしゃがんで躱す。 「賢斗お前な、汚い言葉を使うなよ。俺はナイーブなんだぞ」 ピアスだらけの翔四季は真顔でそう言った。これが翔四季なりの冗談だった。 賢斗はまだ物足りないといった表情をしていたが、しつこくすると翔四季の怒りを買うことになるので、それ以上は続けなかった。 「お前等、遊んでないで開店準備をしろ」 オーナーの一声で、翔四季と賢斗の戯れ事に幕が下ろされた。 翔四季と賢斗はバーカウンター内で開店準備に取り掛かる。 准汰と佳紀は、他の従業員達と一緒に店内の掃除を始めた。
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