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ここ一ヶ月、カジノバーでの仕事は多忙をきわめていた。ギリギリの従業員数で店を回していた為、どの従業員にも休みはろくになく、開店準備から閉店後の後片付けまで一日の大半は拘束されていたのだ。
准汰達は、時に帰るのが面倒でそのまま店に泊まり込んだり、翔四季の車で仮眠をとって過ごすなんて日もざらにあった。
だがしかし、殆どの従業員達が、いくら給料に反映されるとはいえこんな状況をいつまでも続けられたら堪ったもんじゃない、とぼやいているのに対し、准汰達は膨らんでいく給料に歓喜の声を上げていた。
「今月はヤバイな。もう四十万は越えてる」
翔四季は狭いバーカウンター内で電卓を叩くと、目を生き生きとさせて言った。蘇り、とはこのことを言うのだろうか。顔は綻んでいる。
「今月はみんな働いてるからな。俺達も越えてるだろ」
煙草を吹かした賢斗は、翔四季から電卓を取り上げるとその数字に頷いた。
「学校行ってない奴等はリッチでいいよな」
後ろで洗い物をしていた佳紀は背中越しに軽くぼやく。グラスに当たる水道水の音は、些か乱暴な音だった。
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