カジノバーの悪魔

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「お客様、他の方のご迷惑になりますから、今日の所はお引き取り下さい」 「ぬぁ? ぬぅんだ、テメェーはよ。アレがぁ、このイカサマ店の店ヂョーか?」 至って丁寧な対応をした猪狩に対し、段々と呂律が回らなくなってきた酔っ払いは、一歩も引き下がろうとはしなかった。 「お客様、如何様って何のことですか? 変な言い掛かりは止めて下さいよ」 「イガサマはイガザバだろーが。テメェーどぼけんじゃねぇぞ」 酔っ払いの怒号が響き渡る。その声は店内奥にあるバーカウンターまでしっかりと届いていた。 「おい、イガザバだってよ。アイツ頭大丈夫かよ」 翔四季のツッコミで、バーカウンター内に小さな笑いが起きた。翔四季は事の成り行きを実に楽しんでいる様子だった。 「お客様、呑み過ぎですよ。さぁ話なら外で伺いますから、行きましょうか」 「なんだゴラ!! ざわるなっ」 猪狩は喚く酔っ払いをお構いなしに、肩を強引に抱き寄せる形で摘み出そうとした。 出入口に立つボーイは、二人がやって来るとタイミング良く扉を開けて二人を笑顔で見送った。 店内に居る者達は酔っ払いが消え去るのを確認すると、何事もなかったかのように再びバカラや酒に興じる。
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