カジノバーの悪魔

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猪狩は右手に持っていた茶封筒を翔四季に手渡し、それを今からオーナーに届けるよう言った。 翔四季は慣れた感じで請け負うと車のキーを取り、賢斗を連れてそそくさと出て行く。 アルコールの入った翔四季を誰も引き止めようとはしなかった。 猪狩にチェックメイトをされ取り残された准汰と佳紀は、チェスボードを片付けるように些細な宴の後片付けを始めた。 洗い物を終え、准汰と佳紀が帰り支度を始めると、猪狩は静かに歩み寄ってきた。その表情はご機嫌といった感じだった。 「最近忙しいから寝る時間もないんじゃないか?」 「そうなんすよ。もう寝不足で寝不足で。新しいバイトとか入れてくれたら、シフトにも余裕ができるんすけどね」 先に猪狩と目の合った准汰は若干愚痴るように言った。准汰の横では佳紀が小さく頷く。 「人間寝不足だと頭の働きが悪くなって、注意力が散漫して、ミスやトラブルを起こしやすくなるからな。どうだ? 寝ないでも平気ないい薬をやろうか?」 「……く、薬って何ですか?」 佳紀が恐る恐る尋ねると、猪狩はズボンのポケットから小さな透明の袋を出した。中には白い粉らしき物が確認できる。 准汰にはそれが何なのか理解できた。 「シャブ。覚せい剤だよ」
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