カジノバーの悪魔

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覚せい剤。准汰はそれを映画やテレビドラマの中では度々目にしていた。若い男が、または女が、その白い悪魔に魅了され、やがて破滅の道を辿って行く。そこにはハッピーエンドなんてものはなく、ただただ哀れな結末があるだけ。 覚せい剤を使えば必ず人生を転落していく。 それは誰もが知っていることであった。 そしてそんな白い悪魔が、准汰と佳紀の目の前に今こうしてある。 准汰と佳紀は互いに顔を見合わせた。大抵のことには笑ってやり過ごす佳紀だが、今の彼に笑みはなく、真剣な眼差しをしていた。 准汰はこれが夢や冗談ではなく、とてもヤバイ状況なんだと改めて実感した。 「これをやるとな、眠気もぶっ飛んで最高に気持ち良くなれるぞ。それにセックスの気持ち良さも桁違いになる」 猪狩はバーカウンター内に入ると冷蔵庫を開け、中からスポーツドリンクの入ったペットボトルを取り出した。 そしてそれをグラスに注ぐと先程見せた覚せい剤入りの袋を開け、手慣れた様子で中に入れ掻き混ぜる。 「スペシャルドリンクの出来上がりだ。さぁ、飲め」 猪狩は含み笑いを浮かべながら言った。
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