カジノバーの悪魔

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「覚せい剤って割には、意外と何ともないもんだな」 准汰の言葉は強がりからのものではなく、正直な感想だった。余り実感が湧かないのだ。 「……そうだね。最初はこんなんだから皆ハマっちゃって、それで気付いたら抜け出せなくなってるのかもね」 佳紀のその言葉に、そうかもしれない、と准汰は思った。 そして、翔四季と賢斗のことが気掛かりであるのと同時に、二人に対する怒りも覚えていた。 「佳紀……ここで働くのはもうやめた方がいい。これ以上ここに居たら薬漬けにされちまう」 「うん。警察がいつ来るかも分からないとこだし、もともとそんなに長続きする仕事だとは思ってなかったよ」 「短い間だったけど、足を洗うにはいい頃合いだったのかもな」 准汰は短くなった煙草を灰皿に押し付けるとやおら立ち上がった。 「佳紀、帰るか」 「俺、少し片付けてから帰るよ」 佳紀は准汰の血液が付着した床を指差し言った。 「……分かった。じゃあ、俺は先に帰るからよ。バスケ頑張れよな。今度、沙夜と一緒に応援に行くからよ」 「うん。ありがとう、ジュン」 「じゃあな、お疲れ」 「お疲れ」
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