生命

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ピンポーン アパートのどの部屋も同じ音がするであろう個性のないチャイムを鳴らすと、はーい、と甲高い声が返ってきた。 「やぁ、ミッキーマウスだよ」 准汰が全く似ていない声でおどけて言うと、控えめにドアが開く。 ドアの隙間から寝間着姿の沙夜が現れ、入って、と笑顔で促した。 准汰は、お邪魔します、と言って玄関に入ると静かにドアを閉め、エンジニアブーツを乱暴気味に脱いだ。 准汰の白い靴下はエンジニアブーツの色が移り若干黒ずんでいた。 更に爪先の生地が透けていて薄ら肌色が覗いて貧乏たらしかった。 准汰は自分の足元を見て、しまった、と思うのと同時に、沙夜に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになったが、当の沙夜は全く気にも留めていなかった。
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