生命

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部屋に入るなり沙夜は准汰の胸に飛び込んできた。准汰は荷物を持たない一方の腕で華奢な彼女を受け止めた。そのまま茶色に染められた沙夜の髪に鼻を落とすと、シャンプーの香りがして愛おしくなった。 久しぶりの抱擁に准汰の身体が熱く固く反応して、沙夜の中に強く深く入っていきたいと思ったが、体調の悪そうな彼女を抱く程准汰は獣ではなかった。 勿論、身体の痛みや痣を見られるのが不味いというのも理由の一つではあったのだが。 「なかなか会えなくて御免な。風邪みたいだけど、具合はどう?」 「まだ怠いけど、ジュン君が来てくれたから大丈夫だよ。――ねぇジュン君、ちゃんとお風呂に入ってる? ちょっと臭うよ」 「あぁ、悪い。忙しかったから、二日くらい風呂に入ってなかったかも」 准汰が苦笑いを浮かべながら言うと、沙夜は身体を離し、幼い子を見るような眼差しで准汰を見た。 「もうそれでよく接客できたね。お風呂入れてあげるから入って」 そう言って沙夜は浴室に消えていく。それからすぐに浴槽に湯が落とされる乱暴な音が聞こえ、翔四季から香水を借りて臭いを誤魔化していた、というどうでもいい准汰の言い訳を打ち消した。
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