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湯が溜まるのを待つ間、具合の悪い沙夜に何かしてやれないかと思い、准汰は焼そばを作ってやることにした。
本当ならお粥だったり、または沙夜のリクエストに応えてあげたいところなのだが、准汰は料理が全くできないので、インスタントの素っ気ないソース焼そばを作るのが精一杯だったのだ。
准汰がフライパンを持つ姿が余程珍しかったのか、蒲団に入ってろよ、と何度か准汰が言ってみても沙夜はニコニコと笑ってみせるだけで傍から離れなかった。
准汰は麺を炒めるとソースの袋を開け、大雑把に振り掛けた。ジューという音と共にたちまちソースの濃い香りが広がり、やがて換気扇に吸い込まれていく。
「お待たせ」
白い皿に盛られた焼そばは、具のないただのソース焼そばだった。それは不器用に青海苔が散らかっただけの粗末な物。
准汰は完成した焼そばをテーブルの上に置くと、文句を言われる前にベランダに逃げ込み煙草に火をつけた。
准汰は、あんな物を作るくらいならやはり弁当でも買ってきてやった方が良かったかもしれない、と後悔した。
そして、沙夜の体調が良くなったらカクテルでも作って挽回しよう、と思った。
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