生命

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准汰は熱い湯に浸かりながら、一つの考えを導き出していた。 覚せい剤。アレは最初から仕組まれていたことなのではないかと。 ギリギリの従業員数で店を営業し従業員達を疲弊させる。そこに頃合いを見た猪狩が覚せい剤の甘い誘惑を持ちかける。 無論、端から選択肢はなく、誘いを断れば今朝の准汰のようになる訳で、従業員達は結局何だかんだで覚せい剤に手を染めることになり、店から貰う給料の何パーセントかは猪狩の――暴力団の下に流れるシステムなのだろう、と。 そして、もう一つ。翔四季と賢斗はいつから覚せい剤に手を染めていたのか? 翔四季は最初からはめるつもりでカジノバーに誘ったのだろうか? 准汰は考えれば考える程に、カジノバーで過ごした日々がくだらない気がした。 准汰は溜め息をつくと、沙夜にカジノバーを辞めることをどう切り出そうか考えた。思えばそう長くは働いていなかった。 沙夜の体調を考えると、今日は話さない方がいいかもしれない。 折角の焼そばが台無しになってしまう。 准汰は風呂から上がると、用意されていたピンク色のバスタオルで大雑把に身体を拭き、同じく用意されていた可愛らしい部屋着を躊躇うことなく身に付けた。
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