生命

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風呂を出た准汰はすぐに睡魔に襲われ、そのまま沙夜と眠り込んでしまった。 目が覚めたのは昼の三時過ぎだった。 身体は汗ばみ、不快な寝起きだった。 沙夜は既に起きていて、洗濯物を畳んでいた。その姿が妙に男心を擽って、准汰は沙夜を抱き締めたくなった。 「おはよう」 先に声を掛けたのは沙夜だった。寝起きの准汰はぶっきらぼうに返事をすると、煙草を手に取りベランダに出た。 外の日差しは強かったが、風のお陰で暑さは苦にならなかった。 准汰は、こんな生活も悪くない、と思った。 准汰は部屋に戻ると歯を磨き、顔を洗い、元のワイシャツとジーンズに着替えた。准汰はもっとゆっくりしようかとも考えたが、この日は帰ることにした。 別れ際、沙夜がせがんだので、短く唇を重ねた。 准汰は甘い余韻に浸ると帰りづらくなると思ったので、唇を離すと、じゃあ、と言って玄関に向かった。 だが沙夜の腕が後ろから伸びてきて、准汰を強く抱き締めた。 「このままでいいから、少し聞いてほしいの……」 准汰の背中越しに沙夜は言った。 その声は重く、何か決意を感じさせるものがあり、瞬く間に准汰と沙夜の間に緊張感が漂い始めた。
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