准汰と翔四季

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「ジュン、何熱くなってんだよ」 「うるせー。誤魔化すな。俺が聞いたことだけ答えろよ」 翔四季は准汰の問いには答えず、ただ欝陶しそうな顔をしてみせるだけだった。 「最近やたらと金を欲しがったのも、暴走しがちだったのも、全部覚せい剤の所為なんだろ? なぁ何とか言えよ」 准汰は翔四季の心に問い掛けた。まだ僅かにでも翔四季の良心が残っているのなら必ず届く筈だと。 「……そういや、ジュンとは一度もやり合ったことないよな」 翔四季は煙草を指で弾いて飛ばすと、鋭い目つきで睨み返し、准汰の胸倉を力強く掴んだ。 翔四季の目は圧倒的な攻撃力を誇っていた。決して退くことを知らない目。今まで隣でそれを見ていた時は実に頼もしく愉快であったが、いざこうして向かい合ってみると、実に恐ろしく威圧的だと准汰は思った。 だが准汰は翔四季に負ける気がしなかった。微塵も感じなかった。 何故ならそれは、准汰には守るべきものがあったからだ。 翔四季にはない力――家族。 沙夜と沙夜のお腹の子が、准汰に何者にも屈しない力を与えてくれていた。
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