准汰と翔四季

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「なぁ、翔四季。俺よ、家族ができたんだよ。今、沙夜のお腹に赤ちゃんが居るんだ。俺は結婚して沙夜と子供を幸せにしてやろうと思ってる。だから、お前にも、覚せい剤にも負けねぇ。屈しねぇ」 「……そうか」 翔四季は特に驚く素振りも見せずに准汰の胸倉から手を離すと、淡々と言葉を続けた。 「オーナーには適当に言っとく。変なことに巻き込んじまって悪かったな」 その言葉に翔四季の胸倉を掴んでいた准汰の手も解けた。 「覚せい剤なんて止めろよ。死んじまうぞ」 「まぁ、誰だって遅かれ早かれ死ぬだろ」 「俺が言いたいのはそういうことじゃねぇよ」 「……今更ジュンの説教なんて聞きたかねぇよ」 「翔四季! 俺は親友としてお前に……」 「おめでとう、ジュン」 翔四季は准汰の言葉を遮り祝福の言葉を言った。 そして車に乗り込むとエンジンを掛け、そのまま走り去ってしまった。 それは、あっという間だった。 准汰は先程二人が投げ飛ばした煙草を見付けると、馬鹿野郎、と呟いた。 二本の煙草はだらしなくアスファルトに寝転がり、黙々と煙を上げている。 先に火が消えたのは……翔四季の煙草だった。 それはまるで、この先の翔四季の運命を物語っているかのようであった。
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