准汰と翔四季

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佳紀が准汰の家にやって来たのは翌日のことだった。准汰は佳紀から手渡された茶封筒の中身を見て驚きを隠せなかった。 何故ならそれは、茶封筒の中に現金五十万円が入っていたからだった。 「佳紀、これどうしたんだよ? スゲー大金だぞ」 「今朝、翔四季が来て、それをジュンに渡してくれって――結婚するんだってね。翔四季から聞いたよ」 「あぁ……。でも、この金……」 准汰はその金が人から巻き上げたり、盗んだりしたものではないかと思い困惑した。 「ジュンの考えてることは分かるよ。それが汚い金なんじゃないかって思ってるんでしょ?」 「あぁ。そもそも何で翔四季が俺にこんな大金を?」 准汰は怪訝な面持ちで聞いた。 「俺は直接その場に居合わせた訳じゃないけど――ジュンがこれまで働いた分の給料約四十万円を、翔四季がオーナーに頭を下げて受け取ってきてくれたらしいよ。それにプラスした十万円は、翔四季からの御祝いだって」 准汰は煙草をくわえたままで、火をつけることはなかった。 そして暫くの間、テーブルに置いた五十万円を遠い眼差しで眺めていた。
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