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准汰は恐怖から逃れる為に蒲団の中にすっぽり潜り込むと、目を瞑り、両耳を押さえ、心の中で必死に助けを求めた。
(ウートラマンたすけて)
(パパママ、こあいよ)
(パパママ、なかよしいい)
(わるいかいじゅーどこかいる)
(ウートラマン、かいじゅーたおしてパパママなかよしして……)
やがて准汰の意識は遠退き、深い眠りについた。
次に目が覚めた時には既に雀の囀りが聞こえていた。
准汰は蒲団から出ると、昨夜の出来事が全部夢のような気がして安心した。
だがしかし、居間に入った瞬間、現実に戻され愕然とした。
穴の開いた壁、割れた窓硝子、ひっくり返った食卓に散らかった食器や食べ物――そして、そこに佇む母の後ろ姿。
「ママ」
准汰の呼び掛けに紀美子が振り返ることはなかった。
紀美子はまるで置物のようにそこに固まっていた。
准汰はそんな紀美子のもとに歩み寄ろうとしたが、突然足に痛みを感じて立ち止まってしまった。
准汰の小さな足には、割れた硝子片が突き刺さっていたのだ。
「ママ、おあしいたいお……」
准汰は涙を堪え遠慮がちに言ってみたが、やはり紀美子は振り返らなかった。
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