プロローグ

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午後六時十七分。先に待ち合わせ場所に到着したのは准汰の方だった。まだ羽香南の姿は見えない。 午後六時三十五分。改札口が人で慌ただしくなる度に、准汰は羽香南の姿を捜す。 午後七時三分。まだ羽香南は現れない。 准汰は急な残業かもしれないと思い、もう少し待ってみることにした。 午後七時三十八分。羽香南にメールを打つ。 〈もしかして残業? まだ待ってるから早くこいよー〉 午後八時四分。羽香南に電話をする。コール音は鳴らず、留守番電話に繋がった。 「……もしもし俺だけど、残業してるのかな? 今日さ、スゲーいい話があるんだよ。多分、喜んでくれると思うんだ。だからさ、まだ待ってるからさ。早く来いよ」 午後八時二十二分。准汰の携帯電話が鳴った。 電話に出る前に液晶画面を確認すると加賀海栞(かがみ しおり)と表示されていた。 「もしもし、栞ですけど。すぐにS病院に来て。お姉ちゃんが、お姉ちゃんが……。ジュンさん、お願いだから早く来て……」 病院というキーワードと、栞のただならぬ声で、羽香南の身に何かとんでもないことが起きたのだと理解した。 准汰は胸の中に渦巻く不安や恐怖を必死で抑え、熱帯夜の街中を無我夢中で走り抜けた。
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