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「さ、沙夜さんと結婚させて下さい。お願いします」
准汰は今まで経験したことのない緊張感に包まれていた。額には既に汗が浮かんでいる。
「お母さん、私からもお願い。私もジュン君と結婚したいの」
土下座する准汰の横で沙夜も懇願をしたが、その顔はまるで人形をねだる幼女のように幼かった。
沙夜の母親、昭子(あきこ)は、准汰達に子供ができたという事実に取り乱すこともなく、ここまで二人の話を冷静に聞いていた。
准汰はそんな昭子の佇まいが、由緒ある大国の気高き女王のように見えてならず、ただただその前に平伏すしかなかった。
「准汰君。あなたは今、どんなお仕事をしているの?」
「えっと、その……すいません、今は無職です……」
「それでどうやって沙夜と赤ちゃんを食べさせていくつもりなのかしら?」
「あの……し、仕事はすぐに探してきます」
「探してくるってどんな仕事を探すの?」
「えっと……金が、給料が多い仕事を探してきます」
「……准汰君はまだ未成年よね。あなたのご両親はこのことをもう御存じなのかしら?」
「いえ、まだ話していません。これから話すつもりです」
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