甘い夢、厳しい現実

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夕食の時間になり、准汰は居間へ向かった。 紀美子は准汰を見るなり、どうしたのその髪、と言った。 堺は准汰には見向きもせず、ビール片手にナイター中継に夢中になっている。 「もしかして、一緒に食べるのかい?」 紀美子は准汰に聞いた。 「今更アンタ等と飯なんか食うかよ。それよりも大事な話があんだよ」 「大事な話って何だい? また面倒なことじゃないだろうね。また警察に行くのなんてアタシは御免だからね」 「そんなんじゃねぇよ」 准汰は紀美子の言葉に苛立ちを隠せなかった。 「じゃあ、何だい?」 「あのさ、今付き合ってる彼女が居るんだけどよ……その彼女が妊娠したんだ。それで結婚して子供育てようと思ってんだけど……別にいいだろ?」 「准汰、アンタ何言ってんだい。子供って……馬鹿言いなさい。アンタ、どこのお嬢さん孕ませたんだい?」 紀美子はびっくりして食事をする手を止めた。 「孕ませたってそんな言い方ねぇだろ。彼女も結婚して赤ちゃんを産みたいって言ってんだ。構わねぇだろ」 「アンタ、まだ子供じゃない。駄目に決まってんでしょ」 「じゃあ、どうしろって言うんだよ」
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