甘い夢、厳しい現実

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「諦めなさい。そのお嬢さんには気の毒だけど、子供は中絶しなさい」 「中絶って、ふざけんなよ。生命なんだぞ!!! そんなことできる訳ねぇだろ」 思わず准汰は怒鳴った。そんな准汰の怒鳴り声に反応して、堺は一瞬准汰を見たが、またすぐにナイター中継に視線を戻す。 「アンタ今まで悪さばかりしてきて、そんなアンタに子供が育てられる訳ないでしょ。大体、仕事は何してんだい? アンタ、親にも話さないで」 「親にも話さないでって、今まで親子の会話なんてしたことあったかよ? 何もねぇじゃねぇか! いつも勝手に振り回して、俺の話なんて聞いてくれなかった癖に。都合のいい時だけ母親ぶんな。家族ぶんな!!!」 「准汰、アンタ親に向かって何だい、その口の聞き方は」 「うるせー。大体、こんな家族ごっこみてーな家を作りやがって。テメェ等は俺の何なんだよ!!」 准汰の叫び声に堺は舌打ちをすると、テレビのボリュームを目一杯上げた。居間にナイター中継の実況が響き渡る。 「うるせーな。今、大事な話してんのが分かんねぇのかよ!!!」 准汰は食卓を思い切り叩き付けながら堺に吠えた。
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