105人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし、堺はナイター中継から目を離さなかった。
准汰は我慢ならず、堺からテレビのリモコンを取り上げると電源を切り、リモコンを居間の外に投げ付けた。
「ったく、この子ったらどんどんあの男に似てきて嫌になるわ」
紀美子は言った。
「あの男って誰のことだよ?」
「決まってんだろ、アンタの父親だよ。アレはろくでもない男だったんだから」
「またそれかよ。んなもん聞き飽きたんだよ。確かに親父は最低な男だったのかもしれねぇよ。だけど、それでも俺の親父なんだ。俺には親父の血が半分混じってんだよ。だから親父を侮辱することは俺も半分侮辱されてるのと同じなんだよ。何でアンタはそういうことに気付かないんだよ」
准汰は幼い頃から押し殺してきた感情をぶちまけた。
「俺はな、アンタに“母親”をやってほしかったんだよ。それなのにアンタは男にべったりで、俺に見向きもしてくれなかった。俺が今までどんな気持ちでいたか分かるか? 親父に捨てられて、アンタにも見離されて、ずっと寂しかったんだ。ずっとずっと孤独だったんだ!!」
最初のコメントを投稿しよう!