甘い夢、厳しい現実

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「何が分かったんだい?」 「テメェ等なんかが俺の家族じゃねぇってことだよ。こんな家、出てってやる。もう二度と帰ってくるもんか」 「出てくって准汰、子供は中絶させなさいよ。分かったね?」 「うるせー!! テメェの孫だろうが!!!」 准汰は自分の部屋から財布と買ったばかりの求人情報誌を手に取ると家を飛び出した。 そして、当てもなくたださ迷う。 (こんなんなら産むんじゃなかったよ。宗一を引き取って育てるべきだったわ) 道行く通行人と肩がぶつかる度に准汰は吠え、噛み付いた。 (出てくって准汰、子供は中絶させなさいよ。分かったね?) 准汰が赤信号の交差点を渡ろうとして、大型トラックが急ブレーキを踏む。 「飛び出しやがって馬鹿野郎。死にてぇのか」 恰幅のいいトラックの運転手は怒鳴った。 「どいつもこいつもうるせーな。俺も沙夜のお腹の子も死なねぇんだよ」 准汰も負けじと叫ぶ。 やがて、さ迷い続けた准汰の視界に公園が映る。 准汰はその公園に導かれるかのようにして入ると、ベンチに腰掛けた。 薄暗い夜の公園。 人っ子一人居なかった。 ただ虫の音だけが辺りにこだまする。
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