激動

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「十九年見てきたって、一体俺の何を見てきたって言うんだよ」 「ったく、ああ言えばこう言うでいちいち五月蝿い子だね。一度くらい親の言うことが黙って聞けないのかい」 「まぁまぁ、高杉さんも准汰君もその辺にして下さいな」 昭子が割って入ると、紀美子はばつの悪そうな表情を浮かべた。 准汰は沙夜の顔色を窺ったが、沙夜は俯いてしまい二人の視線が合うことはなかった。 「高杉さん、この際准汰君のお父さんのことは関係ないじゃないですか。准汰君は准汰君ですよ。それに過去ばかり見ていても仕方ありません。今大事なのは、今の准汰君とこの先の准汰君だと思うんです。だから私は准汰君の将来を信じてあげたい。そう思うのですが」 「いいえ、アタシは断固として反対します。子供が産まれてきてから後悔したんじゃ遅いんですよ。それにこの子達はまだ若い。いくらでもやり直しができるんです。ですから、今回は中絶をしましょう。費用は全てアタシの方で出させて頂きますから」 「おふくろっ!!」 「准汰君は黙ってて。高杉さん、私も子供を産ませてあげることが必ずしもいいことだとは思っていません。二人が産みっぱなしの親になってしまったら、それでは産まれてきた子が不幸ですから。ですが若さや過去を理由に、二人の想いやこの小さな生命を犠牲にすることが果たして最善と言えるのでしょうか? 准汰君が本当に酷い子だったら、私達の所に報告なんてせず、とっくに中絶をしてた筈ですよ。少なからず、彼には誠意がある、そう思いませんか?」
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