激動

8/25
前へ
/174ページ
次へ
そして、四人で話し合いをしたこの日を境に、准汰と沙夜の関係はぎこちなくなってしまった。 仕事に追われる准汰と、不安に苛まれる沙夜。 准汰は毎日、午前二時半には起きて仕事に向かう。朝の仕事が終わるのが大体午前九時から十時。 午後は一時から夕刊の準備と配達があり、仕事が終わってアパートに帰れるのが午後七時から八時になる。 くたくたになって帰った准汰は、また明日に備えて寝ることしかできない。 それでも“家族の為”と思えば、准汰は仕事を苦に思うことはなかった。 沙夜はあれ以来、中絶という言葉がずっと耳を離れず情緒が不安定になっていた。 忙しい准汰とはなかなか会えず、准汰の部屋に電話がない為に電話もろくにできなかった。 それでも准汰は、仕事終わりに公衆電話から沙夜に電話を掛けたが、沙夜はその度に准汰を試すような質問をしてはヒステリーを起こし、二人は度々喧嘩をした。 次第に准汰はそんな沙夜に疲れを感じてゆき、沙夜の准汰に対する信頼は揺らいでいく……。 若い二人の愛は、余りにも脆かった。
/174ページ

最初のコメントを投稿しよう!

105人が本棚に入れています
本棚に追加