激動

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そして准汰と沙夜の気持ちが急速に冷めていく中、決定的な事件が起ころうとしていた。 それは新聞販売店に掛かってきた一本の電話から始まる――。 「もしもし、ジュンか?」 電話の主は翔四季だった。 「ああ。それよりどうしてここが分かったんだ?」 「佳紀から聞いたんだよ。新聞配達やってんだってな」 「ああ。そういえば、金ありがとな。佳紀からちゃんと受け取ったぞ」 「気にすんな。あれはジュンが稼いだ金なんだからよ」 「で、今日は一体何の用だよ?」 「実はちょいとトラブってな。できればジュンの力を貸してほしいと思って……」 「トラブルって何だよ? また喧嘩か? 悪いけどそういうことなら力になれない。もう俺一人じゃないし、そういうのは卒業だよ」 「そうか、そうだよな……。なんか仕事中に悪かったな」 「なぁ、翔四季。まだ覚せい剤なんかやってんのか?」 准汰は辺りに人が居ないのを確認すると、声を潜めて言った。 「今更、止められねぇよ……」 翔四季は最後にそう言い残して電話を切った。 准汰が翔四季の声を聞いたのは、これが最後だった……。
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