激動

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賢斗はリンチを受けた揚句、橋の上から落とされた。不運にも落ちた場所が川ではなく土手だった為に、頭を強打してしまった。 翔四季は逃げる際に携帯していたバタフライナイフで二人を刺し軽傷を負わせる。 そして逃走途中に、まだ赤信号の交差点を走り抜けようとして、たまたまそこにやって来た車に撥ねられてしまった。 覚せい剤に犯された二人の哀れな末路だった――。 准汰は朝の仕事が終わると、いの一番で病院に駆け付けた。 既に賢斗は永遠の眠りについていて、その傍らには涙を枯らした真澄が佇んでいた。 「ねぇ准汰君、この人が誰だか分かる?」 そう言った真澄は悲しげな瞳をしていた。 准汰は賢斗の変わり果てた姿を見て声にならなかった。 ぼこぼこに腫れ上がったその顔は別人のようで、美少年の面影はどこにもなかった。 准汰の血の気が引いていく。 「……違うよね? この人、ケンちゃんじゃないよね? ねぇ、お願いだから違うって言って。この人はケンちゃんじゃないんだって別人だって言ってよ」 真澄の叫びが准汰の胸に突き刺さる。何の言葉も出てこない。 慰めの言葉等どこにもなかった。
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