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「はい、ただいま!」
中に入ると甲高い返事が返ってきた。
「いらっしゃいませ!
私、葉山不動産の営業担当の田中と申します。本日はどういったご用件でしょうか?」
そういって部屋の奥から出てきたのはスーツ姿にお団子頭、スラッとした体型に赤ぶちメガネのいかにもキャリアウーマンな感じの女だった。
「あ、部屋を借りたくて」
「お客様学生さんでいらっしゃいますか?それならこちらのR大学のお近くにありますアパートなどいかがでしょう?」
そう言うと田中はいそいそとチラシを出して拓矢に見せてきた。
「いや、そうじゃなくて」
「あら、お好みではないですか?
ならこちらのマンションなんてどうでしょう。トイレとバスが別々で、お値段もお安く学生さんに今人気なんですよ!」
「いやあの…」
そう言ってさっきのチラシを裏返すと、拓矢を無視してやたら甲高い声で説明を続けた。
…この女、人の話が聞けないのか。
あまりに話を聞かない田中に苛立ちを感じ、帰ろうかと思ったが帰ったところで泊まる場所がないことに気付き我慢して話を聞くことにした。
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