旅の始まり

4/21
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
町の大通りにはいつもの活気はなく、1人の少女だけがとぼとぼ歩いていた。 その少女は町の様子を不信に感じていた。 『?、この町には人がいないのか?』 人の気配すらないこの町に少しリリは不安を覚えたがさほど気にならなかった。 『…まあいい…私はこの町を去る身だ…今さら関係ない。一つ気がかりはあるが…』 リリは先ほど置いてきた自分を呼び出した主人の事を考えていた。 (会って間もないが…いいやつではあったな…少し変態なのはキズだが…) さっきからリリはカイの事を考えては忘れ、考えては忘れ、を繰り返していた。 (さっきから私は何を考えているのだ!会ったばかりのカイになんの未練がある!いい加減にするんだ私!!) リリはさっきから自分の考えを不思議に思っていた。考えても原因がわからないもどかしさにイラついていた。 『それは…確かに少し…ほんの少し…か、かっこよかったり…するが…それだけだ!何を思い返してるのだ私!お前は魔神であろう!』 リリは今まででなかった感情に戸惑いを感じていた。 (くそっ!なんでアイツの顔が浮かぶんだ!?アイツ実は私に呪いでもかけたんじゃないか!?いや、そうにちがいない!!そうでもなきゃ魔神の私がこんな気持ちになるなどありえない!!) 自分に起こった不可解な現象をカイがかけた呪いのせいだと決めつけ心を少し落ち着けた。 (まあ、カイの使い魔になってかっぷめんを食べながらの生活もよかったかもしれんな…) リリは自分でも気づかず少し笑っていた。 『―――だが…私にはもう関係ない…力を失った私1人でどこまでいけるかわからないが…今はもう力を取り戻すために全力を注ぐだけだ!』 リリはもう一度決心し、いつの間にか止まっていた足を動かし、歩き始めた。
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!