1.シオ・クォール

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青い空は終わりを告げ、夜明けを待つ黒い夜空の下。 展望室に入ったシオ・クォールはフードを外した。 青みが強い藍色の髪に空色の瞳。目鼻立ちが整った顔には幼さが残っている。 シオは空をじっと見上げた。 辺りはすっかり夜だ。普段ならエメラルドグリーンの海が青々と澄んだ空と重なっているが、今は同じ闇として溶け合っている。かろうじて水平線が見えるくらいだ。 夜空には青みがかった月が浮かび、それを取り囲むように星が散らされている。 シオは夜明けを待つ退屈を凌ぐ為に散らばっている星の一つ一つを数えるが、それでも退屈だった。 気持ちはそんなか細い光より青い空を望んでいた。 二年前瓦礫の中で発見され、保護された彼にそれ以前の記憶はない。名前すらその時与えられたものであり、本当の名前を、嘗ての自分を彼は全く知らなかった。 だが、彼は何故だか無性に青い空に恋い焦がれた。シオは生まれてからずっとそうだったような気がするくらい空が好きだった。 「何か見えるか?」
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