5.イン・フィーリングス

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一方のリクは刀を下ろして休んでいた。 道場の壁に背中を預け、肩まで袖を捲り、汗で湿った肌を乾かした。デウスエクスマキナは空中で待機させている。 全身を激しい虚脱感と節々を覆う痛みが襲う。「リクが倒れるまで突進し続ける」と云う設定でやったのだが、機械だけあって動きに躊躇や迷いが無い。 ただ整然と突進してくるのを防ぎ続けるだけで、かなり消耗した。 「あぁ~くっそ…。」 リクは自分よりスマートな戦いをこなすシオを横目で見て自分の不甲斐なさに落胆した。 「だいじょーぶぅ?」 からかうようにエリスが声を掛けてきた。 背中までの黒髪を結い上げ、前髪をヘアピン止めている。額にうっすら汗をかき、体操服のネックをパタパタさせている。左手には白と黒の扇を持っていた。 「よいしょっ、と。」 リクの隣に座り、二つの扇を床に置いた。重厚な金属音が鳴った。鉄扇のようだ。 「あっ、オバサンくさかった?!よいしょって普通云わないよね。」 エリスが明るい笑顔を振りまく。煌びやかで、端整に形作られた笑顔だった。 リクはそれに、気持ちが軽くなると同時に微かな気兼ねを噛み締めた。
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