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一方のリクは刀を下ろして休んでいた。
道場の壁に背中を預け、肩まで袖を捲り、汗で湿った肌を乾かした。デウスエクスマキナは空中で待機させている。
全身を激しい虚脱感と節々を覆う痛みが襲う。「リクが倒れるまで突進し続ける」と云う設定でやったのだが、機械だけあって動きに躊躇や迷いが無い。
ただ整然と突進してくるのを防ぎ続けるだけで、かなり消耗した。
「あぁ~くっそ…。」
リクは自分よりスマートな戦いをこなすシオを横目で見て自分の不甲斐なさに落胆した。
「だいじょーぶぅ?」
からかうようにエリスが声を掛けてきた。
背中までの黒髪を結い上げ、前髪をヘアピン止めている。額にうっすら汗をかき、体操服のネックをパタパタさせている。左手には白と黒の扇を持っていた。
「よいしょっ、と。」
リクの隣に座り、二つの扇を床に置いた。重厚な金属音が鳴った。鉄扇のようだ。
「あっ、オバサンくさかった?!よいしょって普通云わないよね。」
エリスが明るい笑顔を振りまく。煌びやかで、端整に形作られた笑顔だった。
リクはそれに、気持ちが軽くなると同時に微かな気兼ねを噛み締めた。
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