5.イン・フィーリングス

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魔法を使う素振りは一切見せない。デウスエクスマキナを逆に鍛錬させているようだ。 「…すごいな。」 今度のリクの感嘆は本心からだ。 「あの子名前なんだっけな…。えぇ~っと…。」 こめかみを小突きながらエリスは考え込む。 「そうだ、シェリル…、シェリル…、ハウルロイド。」 「ゴツい名前だな。貴族みてぇ。」 「貴族なんじゃない?先祖代々魔術師ってよくあるし。そーゆー家ってケッコー鍛えられているんだって。」 「英才教育ってヤツ?」 「だね。先祖代々の血ってのもあるんだろうけど。」 「庶民の俺には越えられねぇもんかな…。」 そう云ったリクだが、その発言にどことなく卑屈さが入り混じっているのに気付き、口を噤んだ。 「そんな事無いよ。環境なんて関係無い、人が手に入れられるモノって、みんな平等に与えられてるんだよ、きっと。それに…。」 エリスは膝を抱え込んだ。 「特別な環境に生まれると、その人が望まなくても色んなモノも抱え込んじゃうんだよ。あの子も、きっと…。」 懐かしげに、愛おしげに、エリスは言葉を紡いだ。 二度目の轟音が響いてもエリスは動じなかった。
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