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リクはシェリルの動揺の意味がわからず、怪訝な気持ちだったが、自分が名乗っていないことを思い出した。
「あっ、俺月白リク。まだ名前云ってなかったな。」
「うん…よろしく、リク君。」
多分初対面で話し掛けたから焦ったんだろう。リクはひとまずシェリルとの距離感をそう解釈した。
「でもさー、シェリルは何したの?コレさっきからずっと地面叩いてるけど…。」
エリスの興味の一番はそこらしい。
シェリルに小突かれたデウスエクスマキナは未だに床を攻撃している。
畳が酷く破れ、陥没し始めているがそれでもやめる気配を見せない。
「デュアルビジョンを使ったの、幻覚系の…。」
「へぇ~幻覚系使えるんだ!しかも機械に騙せるなんてスゴいね!」
エリスの無邪気な賞賛にシェリルは少しだけ頬を緩めて照れた。
幻覚系は文字通り相手の五感を誤認させる事象を起こす魔法だ。
幻影や催眠など様々あるが、デュアルビジョンは相手の視界に術者のイメージを直接流し込む初歩的な術に当たる。
とはいえ、人間と造りが違う機械に誤認させるレベルは中々出来ることではない。具現化するイメージの精巧さだけでなく、相手にイメージを流し込む伝達行程も作り替えねばならないからだ。
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