863人が本棚に入れています
本棚に追加
/913ページ
「学校はね、何を知ってるかとか年が幾つだとかなんて関係ない。ましてや義務なんて論外だ。」
理事長は水平線を見ながら続ける。
空から闇は消え、空と水平線の境が明らかになったが、空はどこか気だるい青色に染まっている。
「ただその人にとって必要だから、ただそれだけだ。その人が意識してようがしてなかろうがね。」
そう云った理事長はシオを見下ろした。シオはまだどこか納得していない表情だ。
理事長はそんなシオの顔が面白かったのかまた小さく笑った。
「まぁ入ればわかるさ。」
理事長はそう云うとシオの肩に手をおいた。
「もう休みなさい。夜更かしは今日までだ。」
「でも…」
シオは不服そうだった。
「云ったろ?『なるようになる』。何も心配せず、その日の流れに身を委ねなさい。ほら、行きなさい。」
理事長に諭され、シオは渋々展望室を出た。
シオが扉を閉めた瞬間、水平線から顔出した太陽が作り出した朝焼けが空を、展望室を真っ赤に染め上げた。
理事長は朝焼けをまた見つめる。
「例え夜明け前がどんなに長く暗くても、朝焼けがどんなに激しい赤で空を染め上げても、青空は必ず現れる…『物事は物事のなるようになる。ただその中で何になるか』、か。」
最初のコメントを投稿しよう!