2.エントランス

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「あっふぁぁぁ…。」 月白リクは高らかに欠伸をした。肘おきに立てかけているバットケースが傾いたを直して目の前の海をボンヤリ眺めた。潮風が小さく吹いた。 今リクはサンドハーストへ向かう船の甲板の上にいる。 彼は今年サンドハーストに入学するのだ。 ベンチは甲板の真ん中で縦の二列で並んでおり、リクは右側の一番前に座っている。 手前には穏やかな海が広がり、船首の方を見れば遠く島の上に聳え立つサンドハーストが確認出来る。 「リク、コーラ買ってきたよ~。」 そんなリクに話しかけてきたのは金髪に碧眼の少年だ。 「あぁ、アレン、ありがと。」 リクはベンチの下からはみ出ているボストンバックとトランクを押し込んでアレンを隣に座らせた。 アレンからコーラを受け取り、代わりに小銭を渡す。 「後何分くらいで着くのかな?」 アレンは自分のアイスティーの缶を開けながら云った。 「今八時半を少し過ぎてるから…後十五分くらいじゃないか?」 リクはコーラを一口飲んだ。 「そっか…後少しで高校デビューってわけだね~。」 「普通の高校じゃないけどな…。」 リクはどこか上の空な様子だ。
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