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唐突にチャイムが鳴り響き、アナウンスが流れた。
「サンドハーストに到着致しました。入学生の皆さんはお忘れ物無いように下船して下さい。では皆さん、良い学校生活を。」
甲板に荷物を抱えた入学生が集まり始めた。人混みの中でオドオドと彷徨っている者がいれば、愛用の武器を威嚇するように見せつけている者もいる。
そんな多彩な顔ぶれを見てリクはまた深々とため息をついた。
「あんまり気にすんなよ、ホラ、胸張って!」
立ち上がったアレンに強く背中を叩かれリクも立ち上がるが、頭の中は不安で埋まっている。
だがそんな気持ちをずっと抱えるわけにもいかない。
リクは荷物を背負うとアレンの云うとおりに胸を張ってみせた。
「よっしゃ、行く…じょわぁっ!」
その途端に船が港に止まった振動でリクは情けない声を上げた。
「じょわぁって…ぷっ!!アハハハ…」
アレンに笑われてリクは顔を赤らめながら笑い顔を睨みつけた。
「う、うるせぇ!たまたまだ!」
「アッハ…ああゴメン、でもそんくらい滑ってるほうがリクらしくていいよ。」
「ああ、もういい!ほら、タラップ架かったぞ!行くぞ!」
リクはぶっきらぼうに言い放って歩き出した。
だが中学生の時からの変わらないやり取りで頭の中で巣くっていた不安は和らいでいた。
まだここには日常がある。
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