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PDAの画面には今二人がいる袋小路の入口をうろつく赤いマーカーがある。
「なんで動かねーんだよ…。さっさと行けよ、行っちまえよ!」
シャーロックはギリギリ歯を鳴らす。ラウルは汗を袖で拭い、一息ついた。
先程まで走りっぱなしで余裕は無かったが、一度休むとリーシェンに云われた言葉が染み出てくる。
「んぉっ、どうした?」
「えっ?」
シャーロックがラウルの顔を覗き込む。
「今舌打ちしたぞ?」
苛立ちで無意識に舌打ちしていたらしい。感情が露呈した事にばつが悪くなったラウルは目を背けた。
「気にしなくていいんだぜ、アイツのハナシなんてさ。」
極力柔らかく云ったつもりだが、汗で髪がこめかみに張り付いているラウルの表情は見えず、答えが見えない。
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