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シャーロックは考え込むように右の首筋をさすった。
「なぁ、ラウル。」
「…何。」
「オレのさ、刺青のハナシしたっけ?」
ラウルは遠慮がちに見上げた。シャーロックの右手に立っているラウルにはハッキリと、その刺青が見える。
彼の第一印象を確実に悪化させている代物に直接触れる勇気を持っていなかった。
「まーしてないだろうなぁ。誰にも聴かれた事ねぇし。」
シャーロックは低く喉笛を鳴らした。
「コイツは俺が二歳の時からあるんだ。」
「えっ…。」
今のタトゥーの位置を考えると、当時は上半身の右側面をほとんど覆っている事になる。
「彫ったのはオヤジとオフクロでさ。まぁ、二人共ちょっとしたカルト教団の信者でね。」
シャーロックは自嘲気味に笑った。あまり聞こえのいい話では無い。
「あっ、別にお前勧誘するわけじゃないかんね。」
柔和な笑顔を崩さずシャーロックは続ける。
「その教団の教えにゃ生まれた子供にこの刺青を入れなきゃならんらしい。」
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