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「そう、なんだ…。」
ラウルは純粋に答えあぐねた。
「ざっと云えばさ、そのカルト教団の教えは人間皆神の一部ってわけ。人の体の余すところ無く神の物で、全て神によって造られた。だからそれを忘れないようにコイツを神の証として彫り込むワケだ。」
シャーロックは刺青を軽く叩いた。
「ようは、人は神に造られた、永久にそれを自覚しながら生きるべき、ってハナシでさ。そりゃ堪ったモンじゃない。物心付いた時からこんな厳めしいモン付けられて、その上一生メイド・イン・ヘヴンってレッテル貼られてさ。初めはイヤでイヤでしょうがなかった。」
「……そして?」
ラウルは初めて尋ねた。少しばかりシャーロックが何を伝えたいのかが気になった。
「いつだったかな…。八つになってからかな。ある日オヤジに訊いたんだ。どうしてこんなの彫ったんだって、こんなの彫られてどう生きりゃいいんだって。でさ、オヤジの奴変態だからさ、俺を宥めてまず延々とカルト教団の教えを説明したわけ。」
シャーロックにとっては切実な問題であるはずだか、口調は軽やかで楽しげだ。
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