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「なぁ、ラウル。お前が持ってるモンもさ。持ってるのはお前なんだ。誰がとやかく云おうが、それはお前のモンで、そしてお前の一部だ。何て云われようが、何て決めつけられようが、お前が決めた事が全てだ。」
ラウルを見つめるシャーロックの顔を見て、ラウルの胸の中で蟠りが溶けた。
そして、そこから染み出たモノを表すように、ラウルの目から涙が落ちた。
「僕はっ…。それでも…。」
ラウルにはまだ迷いがあった。例えシャーロックの通りに生きても、ウィル・オブ・ウィルに、ルーイ・クラウスター・ジュニアに自分を見出す自信が無かった。
シャーロックは予想外の反応にたじろいたが、意を察し、笑いながら肩を叩いた。
「心配すんなって!お前がどうしたいか、それだけでいいんだよ!ぶっちゃけ家の事情は知らないから、俺は今目の前のお前を信じるしかないし。少なくとも俺の前じゃ、好きにしていいんだぜ?」
「好きに…?」
「ああ。ここで、ラウルが何を想っているか、何をしたいか。それが答えだ。」
「何を、想っているか…。何を、したいか…。」
ラウルは目まぐるしく頭を心を動かした。
邪魔な、己の意志を引っ張るものを全て引き剥がした。
クラウスター家、ウィル・オブ・ウィルの歴史、そして兄。
ただただ、真剣に、今の自分に問い続けた。
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